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第20回 「失敗を恐れるな」の実効を上げるには

「失敗を恐れるな」は、言われる割に実効の上がらない言葉だ。
「若いうちは失敗を恐れずに、どんどんぶつかっていくことだ」と、威勢よく言ってきかせる上司も多い。
 
ひょっとしたらその通りかもしれないが、でも職場の現実は失敗すれば必ず評価を落とす。一度落ちた評価はばん回するのが大変だ。
 
一方、『失敗学』などという本も出版され、失敗の必要性や、その持つ価値の高さが説かれてもいて、大方の支持を得ている。それでも人々は失敗を恐れ、これを避けようとする。
 
理由の第1は、上に立つ者が失敗の意義について、深く理解していないということにある。今日のように変化の激しい時代、できることだけをやっていれば現状維持が精一杯、すぐに後れを取ってしまう。新しいことに挑戦して現状を変えていかなければ、世の中の動きについていけない時代なのだ。
 
新たなことに挑戦する者にとって失敗はつきものである。失敗から学びつつ、新たなことを可能にしていく力こそ、今の時代に求められる。上司は「このままでは危ない。なんとかせねば」と現状変更の切迫性を自分にも相手にも気づかせることである。
 
第2の理由として、失敗を受け入れる姿勢が不可欠であること。
 
うまくいって当たり前、失敗すると厳しくしかる。こんな職場では、人々は意欲を失い、「言われたことをほどほどにこなす」仕事ぶりとなり、組織にも個人にもなんらの成長をもたらさない。
 
失敗は、このやり方ではうまくいかないことが分かった点で、1つの前進なのだ。成功もそれに浮かれていると「満足」という消極的な気分に浸り、仕事への取り組みが甘くなる。
 
失敗を恐れさせないためには、失敗を受け入れ、これをプラスの観点からとらえる態度をまず、上司が身につけなければならない。
 
失敗すると、すぐしかる。失敗を分析して、その理由を部下が説明すると「言い訳なんて聞きたくない」と斥ける。これではせっかくの失敗も死んでしまう。「失敗を恐れるな」絵空事でしかなくなる。

福田賢司

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