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言葉を発するうえで、タイミングの良しあしは無視できない。無視できないどころが、効果を左右する決定的条件と言っても言い過ぎではあるまい。
シェイクスピアにこんな一言がある。
「言っていることは正しいかもしれないが、今言うのは間違っています」
正しいことでもタイミングが合わないと逆効果の恐れもある。コミュニケーションの難しさであり、状況判断の大切さでもある。
私が初めて話し方教室に学んだ時のことである。順番に前に出て2分間のスピーチをすることになった。
2番目に番が回ってきて、考える間もなく立ち上がってしゃべったが、すっかりあがっていまい、支離滅裂な話になってしまった。おまけに2分間のベルが鳴らないうちに話が終わりそうだ。「まだですか」と思わずこう言ってしまったところ、爆笑となった。
席に戻った瞬間、「福田さん、落ち着いていましたね」と担当講師。私は耳を疑った。
「まだですか、なんて聞けるのは落ち着いている証拠です。それに話が分かりやすいですね」
思えば、この時の一言が私に話し方の勉強を続けさせ、現在に至らせているとも言える。物事をやり始めた時のタイミングのよい褒め言葉ぐらい、人間にとって励みになるものはない。
「随分あがってましたね。2分持ちませんでしたね」
と言うほうが事実に即した一言だったかもしれないが、これではそうでなくても自信のない人間にダメージを強めるだけだろう。
18年ぶりに阪神を優勝に導いたかつて星野監督にも絶妙なタイミングとも言える一言があった。巨人軍との第1戦、7対1で9回まで勝っていたのに、同点にされ、延長になり、結局引き分けに終わった。全員の選手が雷が落ちると小さくなっていた。結果は違った。
「よく我慢してくれて、引き分けてくれた。責任は私にある。悪かった」
淡々とした言い方に選手は感動した。
ここぞという時の一言で上司の容量が決まる。
福田賢司
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